障害のある医療系学生・医療者のこと

障害のある医療系学生や医療者、また障害のある人の医療に関する論文の備忘録です

米国の1年目の研修医が障害を開示し配慮を求めることにおいてバリアとなるもの

Barriers to Disclosure of Disability and Request for Accommodations Among First-Year Resident Physicians in the US
Karina Pereira-Lima K, Meeks LM, Ross KE T; JAMA Netw Open. 6(5):e239981, 2023.

 

【キーポイント】

なぜ障害のある研修医は自分に必要な配慮を求めないのか。

 

結果
障害を持つ1年目の研修医173人を対象としたこのコホート研究では、配慮が必要な研修医の50.6%が配慮を求めていなかった。スティグマや偏見を恐れること、および明確な制度的プロセスがないことが、必要な配慮を要請しない理由として最も多く報告された。

 

意味
結果から卒後(大学院)の医学教育において、障害情報の開示システムの透明性を高め、最善の方針を遵守することが必要であること、またプログラム責任者は、配慮を求めるに当たって安全でなくサポートされていない環境の要因を調査すべきであると示唆された。

 

【要約】
背景として重要な点
研修医とその患者にとって、研修医の障害における配慮の確保は非常に重要である。しかし研究によると、障害のある研修医のかなりの割合が、必要な配慮を要求していない。

 

目的
障害のある1年目の研修医(インターン)の間での配慮の要請の頻度を評価し、必要な配慮を申請しない要因の可能性を特定すること。

 

方法
研修医1年目の縦断的コホート研究であるIntern Health Studyの一環として、米国64施設の外科系・非外科系研修プログラム86施設の研修医が、入学2ヵ月前(2021年4月~5月)に人口統計学的特性と研修特性を提供した。研修医年度終了時(2022年6月)に、参加者は、障害の有無、障害の種類、配慮を受けたかどうか、配慮を受けなかった場合はその理由など、障害関連情報に関する質問を含む新たな調査に回答した。事後層別化と離脱の重み付けは、配慮を求めた頻度と配慮を求めなかった理由を推定するために用いられた。少なくとも1つの障害を報告したインターンを分析に含めている。

 

主なアウトカムや測定尺度
自己申告の障害の有病率、研修医の専門分野の分布、配慮を求めた頻度、配慮を求めなかった理由

 

結果
ベースライン調査に回答した研修医1486人のうち、799人(53.8%)が障害の質問に回答した。そのうち94人(11.8%;加重数、173人[11.9%])が少なくとも1つの障害を報告し、本研究の対象となった(加重数、男性91人[52.6%]、女性82人[47.4%]、平均年齢[SD] 28.6[3.0]歳)。障害があり、配慮が必要と報告した研修生(173人中83人[48.0%])のうち、半数以上(42人[50.6%])は配慮申請を行わなかった。必要な配慮を求めなかった理由として最も多く報告されたのは、スティグマや偏見に対する恐れ(25人[59.5%])、便宜を求めるための明確な制度的プロセスがない(10人[23.8%])、文書がない(5人[11.9%])であった。

 

結論
プログラム責任者は、研修生が安心して障害を開示したり配慮を要求できないような環境の一因となっているプログラム内の文化的・構造的要因を調査し、障害関連の方針を見直して明確にするべきである。