障害のある医療系学生・医療者のこと

障害のある医療系学生や医療者、また障害のある人の医療に関する論文の備忘録です

別サイトで更新した4つの記事のご紹介

このブログは、障害のある医療系学生・医療者について学んだ記事などの備忘録に使用しています。

別のサイトで4つほどこのテーマに関する研究などをアップしたので、まとめてリンクを貼りました。

 

(タイトルをクリックすると、障害のある医療系学生・医療者支援ネットワーク(DASH)のサイトに飛びます。)

 

 

 

 

 

 

 

医学教育における障害学生支援員の実態調査

著者

Sheets ZC, et al., (2025)

論文タイトル

The Role, Challenges, and Employment Characteristics of Disability Resource Professionals in Medical Education: A National Study

URL

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/23821205251344771

概要

背景
障害のある医学生支援に障害学生支援員(Disability Resource Professionals:DRPs)は非常に重要だが、医学部のわずか9%しか専任のDRPを雇用しておらず、障害のある学生のニーズに対応する準備が不十分な可能性がある。

目的
米国医学部におけるDRPの役割、資格要件、課題を探求し、職務遂行の障壁を特定するとともに、医学教育におけるこの役割を強化・支援するための戦略立案に寄与することを目的とする。

方法
2023年7月から8月にかけて、探索的横断調査を実施した。27項目のオンライン調査を、ソーシャルメディアメーリングリストを通じて便宜的抽出法と雪だるま式抽出法により配布した。質問内容は、組織構造、DRP学生の症例管理規模、職務満足度、メンターシップ、症例管理の障壁についてであった。

結果
米国72のMDプログラムおよび7つのDOプログラムから79名のDRPが参加した。回答者の大半が過重な業務量を報告し、30%が100名を超える学生を担当していた。業務量が管理可能と回答したDRPは半数未満(45.6%)であった。不十分な専門能力開発、メンターシップの欠如、低賃金への不満が共通課題として浮上した。回答者はまた、スティグマ、教員による配慮措置への抵抗、講義・臨床・試験環境における障害配慮の調整の複雑さなど、組織的な障壁も報告した。

 

 

多様性に関する声明と小児科レジデンシープログラムおよび部門の特徴

著者

Sheets ZC, et al., (2025)

論文タイトル

Diversity Statements and Pediatric Residency Program and Department Characteristics

URL

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2834658

概要

目的
外科など専門分野横断的な多様性声明に関する研究は存在するが、小児科に特化した研究は存在しない。本横断研究では、部門要因を含む小児科レジデンシープログラムの特性と多様性声明との関連性を調査する。

方法
2023年6月から10月にかけて電子レジデンシー申請サービス(ERAS)によって特定された208の小児科レジデンシープログラムのウェブサイトから情報を収集した。研修プログラムまたは小児科部門のウェブサイトに掲載されているダイバーシティ声明の有無、プログラムの種類(米国医学大学協会による定義)、プログラムディレクターまたは部門長のジェンダーマイノリティステータス(例:記載された個人代名詞および機関の写真から判断した女性またはノンバイナリー)、プログラム・部門・機関レベルでのDEI教員ポストの有無、機関の権威の代用指標としての国立衛生研究所(NIH)資金提供状況を評価してスコア化した。

結果
本研究では、小児科レジデンシープログラムの56%がプログラムまたは部門レベルで多様性に関する声明を掲げており、その大半が人種や民族性に言及していた。

 

 

 

看護学部における障害のある学生は、入学者全体の8.4%

Disability and Accommodation Use in US Bachelor of Science in Nursing Programs

Brandy L. Jackson, Vanessa K. Cameron, Tiffany M. Hodgens, et al:JAMA Netw Open. 2025;8(2):e2461038.

jamanetwork.com

 

背景

米国医師会は障害のある人のインクルージョンを推進し、それが医学生のデータ収集と障害のある人の増加につながってきた。しかし看護の教育課程に関しては、障害のある学生数や配慮利用に関する情報が依然として不足している。この母集団に関するデータ収集が行われていないことは、障壁の特定やベンチマークの特定、今後の改善を測定することを妨げている。この課題を解決するために、看護の学士号課程に在籍する学部学生を対象に、障害の有無と配慮利用に関して調査を行った。

 

方法

2024年4月1日から7月30日まで、看護学部の全国データを用いて伝統的な基礎教育課程プログラムにおける学生の障害と配慮利用を調査した。研究協力者は、ソーシャルメディアや米国看護大学協会(AACN)の掲示板、AACNのニュースレターを通じて、スノーサンプリング方式で募集した。対象は、米国大学看護教育委員会(Commission on Collegiate Nursing Education)により認定された米国の伝統的なBSNプログラムとしている。また免許取得後や、ABSNプログラム(通常の学士課程よりも短期間で終了できるプログラム)は対象外とした。本研究は、ミシガン大学の機関審査委員会により免除され、同意は不要であった。STROBE報告ガイドラインに従った。

 

質問項目は、医学教育分野で用いられているものを看護学向けに調整して使用した。看護学の質問項目では、各大学の障害学生サービスに登録されている障害のある学生数について障害別のデータを収集した。学校の規模、地域、設置母体(私立か効率化)、障害学生支援サービスやプログラムの特徴も情報を得た。回答者は、各大学の障害学生支援の専門職とした。

 

調査結果の要約には記述統計を用いて、学校間の差を検討には、ランダム効果ロジスティック回帰モデルを用いた。

 

結果

22校がソーシャルメディア掲示板の呼びかけに応じ、19校が調査の基準を満たし、質問紙に回答した。回答校全体では6416人の看護学生のうち562人に障害があることが分かり、これは全登録者の8.4%に相当した。各校における障害を持つ看護学生の割合は2%から21.2%であった。精神障害(不安障害、うつ、双極性障害等)が最も多く(224 [3%])、注意欠陥・多動性障害(ADHD)(141 [2.1%])、慢性疾患(98 [1.2%])が続いた。移動障害(6 [0.1%])と感覚障害(23 [0.4%])はあまり見られなかった。

配慮に関しては、学校ごとの試験対応が最も頻繁に使用(提供)された(19[100%])が、臨床対応はあまり使用されなかった。9校(47.4%)では、障害学生支援員などがいない状態で、障害判定から配慮内容の決定を行っていた。

 

考察

本研究は、学部の看護学教育における障害学生割合を示した初めての調査である。学校による違いは、入試制度や障害に関する専門知識、資源配分の違いなどによっている可能性がある。また障害区分では精神障害ADHDが多いことから、学生の成績や配慮使用(提供)の有効性に関しても今後研究が必要である。移動障害や感覚障害を持つ学生は少ないが、看護職として就業し十分に活躍する際の障壁の同定が求められる。

 

(コメント)

米国は障害学生支援が進んでいるというイメージがあったが、看護ではこれが初めての調査であることに驚いた。19校という限られた数だが、全体像を推定できるデータが示されており、今後の調査のベースラインになる。また抄録には書かれていないが、障害のある学生の割合は入学者全体の8.6%で、医学部の5.9%より高い。おそらく日本もそうなのではないかと思う。

また細かいことだが、一貫して accommodation useと書かれていることは、日本との違いを感じた。日本語ではAccommodationが「配慮」と訳され、配慮に付随する言葉は「提供」とされることが多い。つまり、日本語では”一方的に何かしらの変更を提供する”といったニュアンスがぬぐえないが、英語では、”調整を利用する”といった当事者主体の表現が使われている。言葉は現象の後に作られるが、現象自体に多大な影響を与えるものでもあるので、当事者主体の障害学生支援(支援も、時に一方的になりがちか?)の在り方を意識して考えていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

”忘れられた少数派”医学教育における能力主義(ableism)

“The Forgotten Minority”: Perpetuation of Ableism in Medical Education

Journal of General Internal Medicine; published 15 January 2025

Carol Haywood, Tara Lagu, Maggie Salinger, Roberto López-Rosado, Christene DeJong & Lisa I. Iezzoni

 

背景:

米国ではおおよそ4人に1人が障害のある人だが、障害の有無により、医療の質や医療へのアクセス、医療におけるアウトカムに大きな格差がある。同時に、米国の医師は障害のある人への医療提供に準備ができておらず、障害のある人に対して否定的な偏見があることが明らかにされてきた。

 

目的:

米国の医学校において、医師は障害のある人の医療に関してどのように訓練しているかを理解すること

 

研究デザイン:

質的研究、critical theory paradigm.

 

研究協力者:

米国の医学部教員(n=8)と学生(n=9)を、障害に関連した医学教育を推進する活動への既知の関与に基づいて、障害に関連した研修の知識について任意に抽出した。包含基準としては英語使用者に限定した。

 

データ収集:

2021年9月~2022年2月において、教員と医学生が別々のグループに分かれてオンラインでフォーカスグループディスカッションを行った。それぞれ、録音し、逐語録を作成した。複数人のコード作成者が演繹的・機能的にコードを作成して、テーマが飽和するまでプロセスを繰り返した。

 

主な結果:

主なテーマとして、(1)標準的なカリキュラムから障害関連のことが漏れていること、(2)障害が個人の中の問題として扱われていること、(3)医学界に障害のある人に対する差別が蔓延していること、(4)カリキュラムの変更推進が、担当教授陣や学生主導の努力に頼りすぎていること、などが抽出された。またデータから、個人的・組織的責任の回避や、社会的・研修的文脈を超えた能力主義の浸透など、米国の医学教育において障害のある人に関する研修を取り入れることにおける多様な障壁要因が明らかになった。

 

結論:

医学教育では、隠れたカリキュラム(hidden curriculum)によって障害に関する否定的な偏見がはびこる可能性がある。医療機関や免許付与期間からの十分な支援がないため、障害のある人に関する研修機会を拡大・改善する取り組みが妨げられている。そのため障害のある人の脆弱性が知られているにもかかわらず、医療格差を緩和することに重点を置いた既存のカリキュラムには、障害のある人に関する事項が含まれていない。障害に関連したカリキュラムの内容が改善されなければ、医師は、国内最大のマイノリティ集団をケアするための十分な能力を持てないままになってしまう。

 

(コメント)

ひとつまえの障害のある人が臨床試験・治験の対象から漏れがちであることも関連するが、そもそも構成員として障害のある人が想定されていない社会の在り方が大きな問題だと思う。振り返ると、私自身が看護学生時代に学んだ患者例(症例)も健康な人が疾患を持つ例ばかりで、医療の対象となる疾患以前に障害と共に暮らしている人は記憶にない。それが当たり前だと感じてしまっていた環境やカリキュラムが実はマイノリティの排除の形でもあったことに、ずいぶん経ってから気づかされている。

 

 

 

 

個人の機能障害によるがんの臨床試験からの除外基準

Exclusion of people from oncology clinical trials based on functional status

Nicole D Agaronnik, Mary Linton B Peters, and Lisa I Iezzoni

 

背景と目的:

障害のある人は、障害のない人に比べて、皮膚がんを除くがんの罹患率が高い。2024年の食品医薬品局(FDA)のガイドライン草案では、臨床試験の包括基準を決定するためのパフォーマンスステイタスの基準に関して、より制限の少ない基準値を提唱してきた。われわれは、パフォーマンスステータスやその他の基準に関連した臨床試験からの障害のある人の除外について、検討を行った。

 

方法:

2019年1月1日から2023年12月31日にClinicalTrails.gov(アメリ国立衛生研究所:NIHとFDAが共同で経営する臨床試験のデータベース)に掲載された承認済みの介入研究(第III相および第IV相)のがん関連の臨床試験における適格基準を検討した。機能状態の値は、臨床試験の包含基準におけるEastern Cooperative Oncology Group Performance Status ScaleおよびKarnofsky Performance Scaleを用いて評価した。定性的分析を用いて、機能障害または身体障害に関連する包含基準を検討した。

 

結果:

96件の腫瘍学臨床試験のうち、約40%はEastern Cooperative Oncology GroupとKarnofsky Performance Scaleの値を制限しており、Eastern Cooperative Oncology Group 0または1、あるいは同等のKarnofsky Performance Scale 70以上の患者のみ含むことを明記していた。Eastern Cooperative Oncology Group 2およびKarnofsky Performance Scale 60の患者を対象とした研究は、20%に過ぎなかった。複数の研究で、障害のある人を除外する可能性のある雑多な適格基準が示されていた。また障害のある人が臨床試験に参加するための便宜を図っていることを記述した研究はなかった。

 

結論:

FDAガイドライン草案では、Eastern Cooperative Oncology Groupのスコアが2点、Karnofsky Performance Scaleのスコアが60点の患者を腫瘍学の臨床試験に含めることを推奨している。この研究では、がんの臨床試験が、(障害に関連する他の基準と同様に、)FDAガイドライン草案よりもスコアから制限の多い患者を除外することが多いことを明らかにした。この結果は、2024年FDAガイダンスの最終決定が、将来の臨床試験における障害のある人の参加にどのような影響を及ぼすかを評価するためのベースライン情報となるものである。

 

(コメント)

これまで行ってきた幾度の社会調査でも、アクセシビリティが考慮されていなかったその方法からして、障害のある人が参加しづらい状況になっていたであろうことを痛感させられた。障害のある人の生活を明らかにするための調査で障害のある人を研究協力者として依頼することはあったが、そうではない「一般的な調査」で、障害のある人が当たり前に参加できる環境がないと、真の社会調査とは言えないことを改めて思う。

重度障害のあり障害者運動を行っている友人が、「障害学生支援という言葉がなくなり自分が障害に関係ない仕事ができるようになるまで、本当に社会が変わったとは言えない」と話していたことを思い出す。

がんの臨床試験における精神・知的障害のある人に対する裁量的な包含/除外基準

Discretionary exclusion criteria in oncology clinical trials and exclusion of people with psychiatric and cognitive disabilities

 

Nicole D. Agaronnik, Elyse R. Park, Lisa I. Iezzoni

 

背景

臨床試験プロトコールは、しばしば治験責任医師の裁量によって参加資格があるかどうかを決定することを認めている。

 

目的

がんの臨床試験において、医師が包含基準の決定にどの程度裁量権があり、その頻度や影響がどの程度かを調査すること(特に精神障害認知障害を有する集団を除外しているかどうかを含む)。

 

方法

2019年1月1日から2023年12月31日の間に開始されたClinicalTrials.gov上の介入第III相および第IV相の臨床試験のうち、米国で実施され、患者集団が18~65歳または65歳以上であり、試験実施計画書が掲載されている試験を対象とした。

記述統計を用いて、包含基準における治験責任医師の広範な裁量権の有無を把握した。包含基準に裁量がある記述のうち、精神障害認知障害に関連するものをレビューし、定性的内容分析法を適用してテーマを特定した。

 

結果

96の臨床試験が本研究の対象となった。このうち82試験(85.4%)では、治験責任医師の幅広い裁量によって適格性が決定された。内容分析により、参加者の安全性(すなわち、患者に過度のリスクをもたらすこと)、研究プロトコールを遵守することの潜在的困難性(例えば、患者の身体的、精神的、社会的状態のため)、インフォームド・コンセントを得る能力の認識、介入の結果を決定するための患者の評価の完了に関する懸念が明らかになった。

 

結論

ほとんどのがんの臨床試験は、研究者が個人の参加資格を決定する際に広範な裁量を認めている。このような裁量的基準は、特に精神障害認知障害のある人を対象とし、臨床試験への参加を除外している可能性がある。このような人々を除外する根拠が適切かどうか、さらなる研究が必要である。