障害のある医療系学生・医療者のこと

障害のある医療系学生や医療者、また障害のある人の医療に関する論文の備忘録です

米国医学部(MD課程)における障害の開示に関する構造的なバリア

Structural Barriers to Student Disability Disclosure in US-Allopathic Medical Schools
Meeks LM,  Case B, Stergiopoulos E, et al., Journal of Medical Education and Curricular Development, 26;8: 2021

 

背景
医学教育のリーダーたちは、障害のある学生を含む医学生の多様性を推進する取り組みを表明してきた。にもかかわらず、匿名の調査において障害があると自己開示した医学生の数と、学校レベルで自ら障害について開示して配慮を求めている医学生の数には、大きな隔たりが存在する。医学教育を受ける障害のある学生にとって、構造的な要素が、障害を開示して配慮を求めることにおけるメインのバリアであることが分かっているが、米国のMDプログラムにおける学生の障害の自己開示に関して、学校レベルの実践は研究されていない。

 

方法
2020年8月、大学内における学生の自己開示の構造を確認するための調査票が、医学教育連絡委員会(LCME)認定大学の学生部長に送付された。調査の回答は、米国医師会(AAMC)の障害に関する報告書の考慮事項との整合性に則ってコード化され、AAMC の組織特性データベースや学校規模との関連性が分析された。

 

結果
対象141校中 98校において、障害開示構造(仕組み)に関して回答があった (回答率 70%)。障害開示の仕組みは、回答した98校によって異なっていた。 64校 (65%) のプログラムは、AAMC の考慮事項に沿った障害開示構造を維持していたが、 34 校 (35%) はそうではなかった。障害開示構造と AAMCの組織特性、学校規模との間に統計的に有意な関係は確認されなかった。

 

考察
LCMEの認定 MDプログラム回答者の 35%は、AAMCによる報告書で提示されている障害における考慮事項と一致しない障害開示の構造を採用し続けていた。AAMCの提示内容に準拠していないことは、医学生が配慮を申請し利用する際の大きな障壁となっていることが確認されており、障害の開示を阻害する可能性があります。表明されている多様性への要求に応えるには、学校は障害のある学生を疎外する構造的な障壁を考慮し、アクセスを改善するためにサービスを適切に整える必要がある。

 

補足

AAMCの考慮事項:医学部における障害学生支援(システム)に関するガイダンス
・医学部に専門のDSP(Disability Services Professional)を置く

DSPの役割を担う者は、利益相反を避ける必要がある(つまり、障害のある学生を評価する役割を持つ者による監督は行われないようにする)

DSP には、情報源としての役割を果たし、必要に応じて医療プログラム内の専門教育者を紹介できる医学部副学部長・副学部長補佐レベルの連絡担当者がいること

・メインキャンパスが医学部の障害学生に対して配慮提供を行うシステムでは、メインキャンパスにおける特定の支援スタッフが医学生と協働できるように調整されている必要がある。この場合、支援スタッフは医学部カリキュラムや臨床的な要素に精通しており、医学部のカリキュラム要件に関する専門的なトレーニングを受ける必要がある